30歳すぎるまでアボカドを食べたことがなかったが

こどもが小学校にあがるまで、私は正社員としてバリバリ働いていた。家事の方は仕事に関係なく不得意で、唯一自信を持ってあたれるのは洗濯だけで、掃除や料理は夫の方がうまかった。保育園の卒園式では子どもが皆の前で「ママ、いつも送迎ありがとう。パパ、いつもご飯を作ってくれてありがとう」と言ってしまい、私はひとりで恥ずかしい思いをした。次の子をなかなか授からないことと、小学校では保育園のように遅くまで子どもを見てもらえないという理由から、卒園を機に仕事を辞めた。もう仕事を言い訳にはできなくなったので、掃除も料理も頑張るようになった。入学後はママ友作りも頑張り、お互いの家を行き来する間柄の知り合いも複数できた。

ママ友たちの多くが有名企業にお勤めのご主人を持つ優雅な専業主婦で、暮らしぶりも洗練されていた。おもてなしの術を心得ていて、ちょっとしたランチにも我が家の食卓にはあがったことのない野菜やフルーツなどが並んだ。だから私も、インターネットのレシピ投稿サイトなどを参考に、少しでも見栄えの良い料理ができるように研究した。ある時ママ友から、アボカドをおすそわけしてもらった。30歳すぎるまでアボカドを食べたことがなかったが、これは絶対に使ってみなければと思い、いつものサイトを参考にサラダを作ろうとした。ところが、アボカドを初めて調理する私には、材料を他の具材と混ぜる以前に、皮の剥き方すらわからなかった。リンゴの皮を剥くような感覚でなんとか剥いたあと、真ん中に包丁を入れて2つにしようとしたら障害物にあたり、四苦八苦して最終的にアボカドは、いまだかつて見たことのない、木端微塵のみじめな姿になった。